2013年5月25日土曜日

三浦しをん「舟を編む」、光文社

映画にもなっているが、私はこの本を最初に読んだ。映画は(まだ)見ていない。この本を読んだ動機は、先日書いたように、「辞書を編む」という新書をたまたま買ったら、その帯に三浦しをんが絶賛する短評を書いていたから、逆に、三浦しをんの「舟を編む」に興味を持ったのである。
「辞書を編む」も、「舟を編む」も、どちらも辞書を編纂する仕事の話がメインである。しかし、この舟を編むは、主人公である馬締光也という青年が、大渡海という辞書を会社で編纂する仕事を中心にして、同じ下宿に入ってきた大家の孫娘と恋をし、結婚するという、仕事と恋愛が並列して書かれている小説である。「若いっていいなあ」という感じがする本なのである。この本やこれの映画が人気があるようだが、それは、堅い、まじめな世界に生きていて、それをとても楽しく描いているためではないだろうか。
恋愛の描き方もきれいである。なにしろ、主人公が馬締(まじめ)なんだから、とにかく真面目なのである。恋愛相手の香具矢(かぐや)は、堅物ではないが、板前を本格的に目指している、仕事に意欲を持つ女性で、とてもきれいな女性に描かれている。帯に、宮崎あおいの写真があるから、多分映画では宮崎あおいが香具矢を演じているのであろう。こういうイメージの女性である。
馬締の15枚のラブレターによるプロポーズを一度で受け入れ、しかも、それを冗談やいたずらではなく本気だと知った香具矢が馬締に馬乗りに乗ってきて一気に恋愛を成就しているが、この辺が私としては二人のイメージとは少々異なる。もう少し手間をかけてほしかった。あ、恋愛小説ということではないから、仕方ないか。
まあ、こういう感じで、非常に清潔な感じで、かつ、恋愛気分も味わえる、楽しい本である。
※いま、映画のPR版をネットで見つけて少し見たが、現実的で、具体化されていて、よくわかるが、自分が本から得たイメージとは少し違うように感じた。本を読んだときのイメージは人によってずいぶん違うのだろう。本を読むことの重要性を確信した。

2013年5月21日火曜日

三浦しをん「ビロウな話で恐縮です日記」、太田出版

おまえ、変な本読んどるな~と言われそうです。
話せば長いことながら・・・、三浦しをんを読もうと思ったのは、先日読んだ「辞書を読む」という新書の帯に、この人の書評が帯に書かれていたのです。そう、「「舟を編む」の三浦しをんさん、大絶賛!!」と書かれていたのです。「辞書を読む」がとても面白かったから、これを大絶賛する三浦しおんの本に興味を持ったのでした。
書店で舟を編むを見てみたところ、本屋大賞第1位とか、大学生協一般書・年間ベスト1とか、タイトルを取っていた本なんですね。そこで、書店の同じ並びの本を眺めてみたところ、この本があって、何だか、楽しそうなので、買ってみたというのが理由です(やっとここまで到達!)。

この本は、日記というだけあって、三浦しをんさんの日常生活が書かれています。タイトルどおり、ビロウな話もたくさん。でも、いやらしくありません。それを通り越して、この人の話の軽快さ、リズム感といったものがあふれ出ています。

それはそうと、私、なぜかこの人の名前を「三浦をしん」だと今までずっと思っていました。一度思い込むとなかなか気づかないものです。Yahooか何かで、「三浦をしん」と入れて検索をかけたら「三浦しをんで検索します」という表示が出て初めて気づいたのでした。
今日、授業でこの話を100人の学生の前でしゃべったのですが、誰も三浦しをんを知りませんでした。そんなもん?大学生協で第1位というのに・・・。誰も手を上げなかっただけ?
私1人で道化師になって、雑談をし、面白そうな話をしているのに、「をしん」で笑わず、さらに、三浦しをんを知らないとは、私の教えている学生はいったい何なんだろうと思った次第。

2013年5月12日日曜日

秋元康「趣味力」、生活人新書

こういう本を読むということは、自分も、趣味を持たなければという気持ちがあるからに他ならない。秋本氏は40代で陶芸を趣味にしたという。ギャンブルは趣味にならない。なぜなら、上達しないから。というご主張は納得できた。まあ、私自身、いまギャンブルを趣味にする気は全くないが。
趣味ということでなくても、毎日初めての経験をすることが大切という話には共感を覚えた。確かに、初めてのことは、緊張感を持って行えるし、謙虚になれる。
どんな趣味が持てるだろうか。私なりの趣味としては、アプリ作成などはいいかもしれない。Javaはよくしらないが、C++を知っていれば敷居は低いだろうし。写真は趣味としてやっているが、人の評価を受ける形でやったほうがいいかとも思う。

飯間浩明「辞書を編む」光文社新書

三省堂国語辞典(略して三国)の編者の1人であり、辞書の編集についていろいろと経験や方針などが書かれている。辞書では、新語を入れることが重要な改訂作業であり、特に、この辞書が我々日常生活で必要としているような言葉を扱うことを目的としているため、新語の話が力を入れて書いてある。
三国は、現在、android版アプリがあり、入れようかと思った。ところが、自分のスマホを見ると、富士通の統合版辞書が入っており、全然使ったことがないことを思い出した。あまりスマホで辞書はつかわないなあ。でも、電車の中なんかで遊んでみようかと思って、ダウンロードした。

2013年5月4日土曜日

村上春樹「色彩を持たない多崎つくると,彼の巡礼の年」,文藝春秋

多崎つくるは,名古屋の高校生だった.そして,高校のときの彼を含めた5人の友人(うち,2人が女性)が,不思議な一体化をなしていた.大学に入って,つくるだけが東京に行き,あとの4人は名古屋に残ったが,しばらくの間はつくるが名古屋に帰っても,5人の友人関係が続いた.
しかし,あるとき,4人からいきなり拒絶された.つくるは,理由をしることなく,訳もわからずに拒絶されることになった.
その後,灰田という後輩の友人ができたが,十年以上たってから,沙羅というガールフレンドができた.ここが,この本の「現在」である.つくるは,4人から拒絶されてから,精神的,肉体的に大いに挫折する.沙羅に出会ってから,そのことを打ち明けたら,沙羅は,大学時代の事件を解明するべきであるという.沙羅は,4人の現在の状況を調べてつくるに教えた.その中の1人シロは,既になくなっていた.残る3人を順に訪問し,大学時代の事件が何だったのかを知る.それは,シロが,つくるに強姦されたといったというのであった.
つくるが,順にそのときの友達を訪問して,真相を知ると共に,沙羅と結婚をしたいと考えるようになる.しかし,ある日,つくるは沙羅が中年の男性と親密にしているのを見てしまう.つくるは,ついに,沙羅にも真相を迫った.沙羅は,数日後,真相を話すと約束した.その日の直前で話は終わる・・・
青春小説ですね.若い人に人気があるのはわかる気がする.